日本国内のパティスリー、つまりケーキ屋さんで「ヴァンドゥーズ(販売スタッフ)」として人生の半分以上を費やしてきた私は、大のスイーツ好き。1年間休職し、フランスでヴァンドゥーズとして働きつつ、さまざまな地方菓子を食べてきました。今回は、私がヴァンドゥーズとして働いた、リヨンの老舗ショコラトリー「ベルナション(BERNACHON)」でお気に入りだったケーキを紹介します。
【関連コラム】地元のフランス人に愛されるストラスブールの老舗パティスリー「クリスチャン」フランス第三の街「リヨン」は、美食の都としても知られています。ここで、親子三代続くショコラトリー「ベルナション」は、数少ない“ビーン・トゥー・バー”(カカオ豆からチョコレートを作るところまで自家製)のチョコレート専門店です。地元の人は皆知っている有名なお店で、日本でも毎年開かれる「サロン・デュ・ショコラ」の常連店として、その名を馳せています。私個人は、フランス語の発音から考えると「ベルナション」のほうが正確な日本語訳だと思いますが、日本人への親しみやすさを考慮してか「ベルナシオン」という表記で出店しています。
チョコレート専門店と言えど、ケーキ、パン、惣菜など、商品は多岐にわたります。私がこちらで働いたのは、今は亡き2代目シェフが腕を振るっていた頃です。当時、販売スタッフたるもの、味の知らない商品を売るなんてと、全ての商品を食べ尽くした私の「お気に入り」(ケーキ部門)だったのは、「エヴァンタイユ」というチョコレートケーキです。
丸いチョコレートケーキを4等分に切ったら、扇子型になりますよね。「エヴァンタイユ」とは、フランス語で「扇子」という意味なのです。そのため、「エヴァンタイユ」というチョコレートケーキをカットせずに丸ごと買うと、もはや扇子の形ではなくなるので、「丸ごと」を意味する「アンティエ」に変わるのです。商品の大きさによって名前が変わることは初めてでしたので、そんなことってあるのだと興味深く思っていたものです。なお現在は「エヴァンタイユのアントルメ(切り分けるケーキ)」と呼び方が変わっているようです。
この「エヴァンタイユ」という扇子型のケーキは、アーモンドを使った口当たりの軽いビスキュイ生地の中に、たっぷりクリーミーなガナッシュチョコレートが入っています。見た目はとてもシンプルですが、創業以来、人々に愛され続けているケーキの1つ。フランスのお昼休みは長いので、お昼前にこの「エヴァンタイユ」を購入し、ランチのデザートによく食べたものです。
軽やかな生地の中から出てくるチョコレートはまろやかで、カカオの香りが抜群! 午後の仕事をがんばるための元気の源でした。現在リヨンの店舗は内装をリニューアルし、見応えも十分。隣のサロンで、本場のケーキやチョコレートアイスをゆっくり味わうこともできますよ。
【ベルナション(BERNACHON)】
住所:42 Cours Franklin Roosevelt 69006 Lyon
電話:+33 (0)4 78 24 37 98
【コラム&イラスト:Miko】
都内近郊のパティスリーでヴァンドゥーズとして働きながら、フランス語を猛勉強すること約7年。1年間休職し、フランスはリヨンのショコラトリーでヴァンドゥーズとして働いた他、アルザスでヴァンダンジュ(葡萄摘みの仕事)や、ブルターニュの農家で豚の世話も。フランス中の地方菓子を食べ歩いた食いしん坊。現在はフランス人の夫と子供たちと日本で暮らす、現役ヴァンドゥーズ。イラストも勉強中!
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