全国的に高い知名度を誇る六花亭は、常設店舗は北海道内のみに限定し、創業1933年以来、ケーキなどの生菓子は安価で提供している。ショートケーキは税込み320円。おかわり自由のコーヒーも税込み120円。こうした取り組みの背景にあるものは何なのか。今回は同店の取り組みや姿勢などをうかがった。
【関連写真】六花亭の洋菓子、他イメージ2枚はこちら同店には「帯広本店」と「札幌本店」の2つの本店がある。それぞれの立ち位置や違いは何か?
「帯広本店」は創業の地であることから、シンボルの役割を持つ。地元から観光客でにぎわい、海外からも多くの人が訪れる。「札幌本店」は2015年にオープンし、札幌圏にある店舗の軸となる役割を持つ。帯広・十勝よりも札幌圏の方が人口が多いこともあり、販売額は札幌圏の方が多い。
メニューは「この土地だから」という理由で出しておらず、各店舗で人気の高い商品は、流動的に展開している。例えば「マルセイアイスサンド」は札幌本店のオープンに合わせて同店限定で販売し、その後「帯広本店」や六花の森内(中札内村)にある「六´café(ロッカフェ)」でも食べられるようになった。また現在は帯広本店や西三条店、帯広空港店で提供している「サクサクパイ」。以前は釧路や札幌エリアでも販売していた。このように自分のお気に入りの商品が、いつの日か別エリアでも販売が行われるかもしれない。
それでも六花亭の帯広に対するこだわりは強い。同店の担当者は「帯広の土地から受けている恩恵は、人柄が最も大きい」と話す。同店に勤めている人は“勤勉集団”と呼ばれるほど真面目でコツコツ仕事に取り組む人が多い。これは同店と帯広・十勝の人々の特徴で「お菓子作りにおける資質」(六花亭・担当者)だと見る。こうした職人の人柄を意識し、商品を作る工場は、帯広と近隣エリアの中札内村の3拠点のみだという。
工場の拠点のみならず、道外に店舗を出さないことにも理由がある。道外では、どうしてもお菓子を作ってから届くまでに時間がかかる。「帯広で作ったお菓子を、自分たちの手で届けられる範囲にしたい」(六花亭・担当者)という想いから、常設店舗は北海道内に限定している。
今回最も目を引いたのはケーキ類の価格。東京都内では、優れた素材を優れたパティシエが調理すれば、1ピースのショートケーキが1,500円をゆうに超えることもある。一体なぜここまで低価格で提供しているのか? 六花亭の担当者はこう語る。
「“お土産屋”ではなく、日常に買ってもらえる“おやつ屋さん”であり続けたいという想いで、どれもお小遣いで買える範囲の価格に設定しています。帯広は土地柄、比較的低価格なお菓子屋さんが多いです。そのため、特別安くしようと意識しているわけではありません。物価高の影響を受けて値上げも徐々にしています」
だが、お小遣いの範囲を守るために工夫していることもある。
フルーツをはじめとするすべての原材料は、毎日のおやつとして買える価格に抑えられるよう原価と素材のバランスを考えている。例えば、どうしても原価が高くなってしまうメロンを使ったスイーツは現状ではないという。その代わり、「その時に一番おいしいもの」を選び、満足度の高いスイーツに仕上げている。
お菓子の製造に不可欠な小麦や乳製品といった原材料は、北海道だけでなく、国内外を含め作りたいお菓子の特性に合わせて、納得するものだけを厳選して使っている。お菓子1つずつ素材に向き合い、お菓子作りに日々取り組んでいる。
創業から91年経過し、100周年の大台も近づく六花亭。昭和、平成、令和と道民に愛され続ける理由は一体何なのか。担当者はこう語る。
「創業以来、良いものを使い、おいしいお菓子をお客様に届けたいと思い作り続けてきました。それはこれからも変わりません」
時代を経てもなお変わらない信念こそが、北海道民に愛され続ける理由なのかもしれない。
【六花亭 帯広本店】
住所:北海道帯広市西2条南9‐6
時間:9時~18時(店舗)、11時〜16時30分(喫茶室)
電話:0120‐12‐6666(カスタマーセンター)
【取材・撮影・文:ゆめ】
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