マスカルポーネチーズや卵、エスプレッソコーヒーで作るイタリア発の甘いスイーツ「ティラミス」(Tiramisu)。上にふりかけるココアパウダーやチョコレートパウダーのブラウンカラーが目を引くイタリアン・ドルチェだ。イタリア全土で愛され、日本でもコンビニやスーパーのデザートコーナーで定番スイーツとしてよく見かけ、知名度が高い。
【インタビュー】55歳でケーキ屋創業 営業続けて今や80歳の鉄人おばあちゃん「蹴飛ばされても死なないよ」ティラミスは クリームやバターに似た甘みと食感、フィンガービスケットやスポンジケーキに染み込ませたエスプレッソコーヒーのほのかな苦味が渾然一体となり、深い味わいを生み出す。
実はこのティラミス、歴史は浅く、誕生は20世紀後半。発祥はイタリア北部のヴェネト州トレヴィーゾのレストラン「レ・ベッケリエ」にて、“ティラミスの父”と呼ばれた菓子職人アド・カンペオルさん(2021年10月30日に死去)が考案したのがきっかけだといわれる。ただしヴェネツィア発祥説なども存在する。
ちなみにティラミスはイタリア語で“Tiramisù”と書き、さらに動詞「Tira」(tirare:引っ張る)、間接目的語代名詞「mi」(私を、私に)、前置詞「su」(〜の上) の三単語に分解できる。
“Tira mi su!”と一文で直訳すると「私を上に引っ張って!」という意味に。意訳すると「(私を)元気づけて!」となる。
日本人の目線で考えると、何とも自己主張の強い話し方に感じる。だが、イタリア語では、バーで仲間と合流するときに“Eccomi!”(Ecco+mi/「はい、私が来たよ〜!」「私がここにいるよ〜!」の意味)などのフレーズが日常的に使われている。転じて“Tira mi su!”という言い回しも、イタリア人目線で考えると、そんなに不自然な表現ではない。
世界中に多種多様なレシピが存在
ティラミスはクリームチーズ「マスカルポーネ」の存在を世界に広めるのに一役買ったドルチェだ。そのため、「ティラミス=マスカルポーネ」と思われがちだが、生クリームなどを使ったより口当たりの軽いティラミスもある。
日本では、1980年代の“イタ飯ブーム”(イタリアン料理の流行)をきっかけにティラミスの認知度が拡大。現在、スイーツの一ジャンルとしてその地位を確立している。ティラミス自体も市民権を獲得し、味も形も店によって異なり、カップに入れるものから皿盛りデザートまである。一口にティラミスと言っても、甘みも見た目も多種多様だ。
家庭でもすぐ作れるほど手軽なスイーツで、スイーツを盛りつけたり、エスプレッソコーヒーの代わりにシロップ、ココアパウダーの代わりにコーヒー豆の粉をふりかけたりする食べ方もある。
イタリア中の多数の店で修行し、日本でおいしいイタリア料理を発信してきた落合務さんは、マスカルポーネを用いたベースの濃厚なクリームの作り方に関して、著書「落合務の基本のイタリアン」のなかで「氷水に当てながら角(つの)が立つまでしっかり泡立てることで軽い口当たりに仕上がり、濃厚さが嫌味にならないんです」とワンポイントアドバイスを送っている。
参考文献:
・「菓子検定 公式問題集&解説【3級】」(大阪あべの辻製菓専門学校/評論社)
・「いちばんやさしい イタリア料理」(料理・佐藤護さん、監修・長本和子さん/成美堂出版)
・「伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ 10分でできる伊式速攻料理」(調理・エリオ・コッツァ/武田ランダムハウスジャパン)
・「落合務の基本のイタリアン」(落合務/講談社)
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