
秋のモンブラン商戦で、いまや「栗の産地」や「クリームの濃さ」と並んで重要になっているのが、“できたて”という価値だ。象徴的なのが、阪神梅田本店で10月7日〜12日に開かれる「スイーツなかのpresents 阪神モンブラン展Vol.3」。テーマは「できたて」で、シェフが来場者の目の前でモンブランを絞る実演を前面に打ち出す。
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一体なぜ、モンブランは目の前で仕上げるだけで特別に見えるのか?
理由の1つは、ずばり、栗という素材が風味や口当たりの変化を感じ取りやすいことにありそうだ。細く絞られたマロンクリームは、なめらかな口当たりと栗の風味を楽しみやすい。一方、時間が経てばクリームの状態は変化し、土台にメレンゲを使うタイプではサクサクとした食感も失われていく。モンブランは「完成直後を食べる意味」を伝えやすいスイーツである。

この価値を打ち出す代表例が「和栗や Mont Blanc STYLE」。自ら育てた栗を客の目の前でモンブランに仕上げ、「持ち帰るケーキ」から「食べに行くデザート」への転換を掲げてきた。
京都の「和栗専門 紗織」も、注文後に1ミリの錦糸状の和栗クリームを目の前で絞る。「栗歩」は約1mmのクリームが幾重にも重なる工程そのものを“視覚で楽しむモンブラン”として訴求。「栗りん」も最後の仕上げを客前で行い、視覚や香りまで含めた「五感」の体験を打ち出している。

静岡県熱海市の熱海銀座商店街に店をかまえるモンブラン専門店「和栗菓子kiito -生糸-」も、生絞りを大きな特徴としている。京都の「和栗専門 紗織」と熱海の老舗「古屋旅館」が共同プロデュースした店舗で、看板の「生糸モンブラン」は、熊本県上益城産の和栗を使ったペーストを、その場で搾り機から約1mmの細さで絞って仕上げる。完成していく姿を目の前で楽しめるだけでなく、顔を近づければ栗の香りまで感じられるという、“できたて”だからこその魅力を商品価値に組み込んだ一例だ。
ここで重要なのは、実演が単なるパフォーマンスではない点だ。機械から細い栗クリームが途切れず落ち、山の形が完成していく数十秒間に、客は「自分のために作られている」と感じる。完成品をショーケースから選ぶのとは、商品との距離がまるで違う。
モンブランでは、製造工程を隠すのではなく、むしろ売り場に出すことが付加価値になる。味、風味、食感に加え、「完成する瞬間」まで商品になる。生絞りモンブランが定着した理由は、栗の味わいだけでなく、スイーツを“買う”行為そのものを体験へ変えたことにあると言えそうだ。
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