【考察】原料高なのになぜ値下げ? イトーヨーカドーがクリスマスケーキの価格を抑える理由

「ガトーショコラ」4号・税込み3,218円、5号・税込み3,888円コラム
「ガトーショコラ」4号・税込み3,218円、5号・税込み3,888円
「ガトーショコラ」4号・税込み3,218円、5号・税込み3,888円
「ガトーショコラ」4号・税込み3,218円、5号・税込み3,888円

 原材料費や物流費の上昇が続く中、2026年のクリスマス商戦でイトーヨーカドーが打ち出したのは、意外にも「価格」である。人気No.1のショートケーキ「ガトーフレーズ」は価格上昇を抑え、「ガトーショコラ」は前年から値下げ。さらに税込み2,786円の「プティ・フレーズ 3.5号」も新たに投入し、2,000円台の選択肢を増やした。

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 もっとも、「ガトーフレーズ」は完全な据え置きではない。4号は2025年の税込み3,542円から2026年は3,780円、5号は4,082円から4,298円へ上昇している。イトーヨーカドーは今年のクリスマスケーキの資料内で「価格上昇を抑制」と説明しており、原料高の中でも値上げ幅を抑える姿勢を打ち出した格好だ。

「ガトーフレーズ」4号・税込み3,780円、5号・税込み4,298円
「ガトーフレーズ」4号・税込み3,780円、5号・税込み4,298円

 では、なぜそれが可能なのか。クリスマスケーキ固有の詳しい原価低減策は公表されていない。ただ、イトーヨーカドーは低価格PB「セブン・ザ・プライス」で、パッケージの効率化・共通化、物流・生産体制の集約・効率化、シンプルな商品づくりなどによってコストを抑えている。一部商品では、原料のまとめ仕入れや一括調達、共同仕入れも実施。2024年にはイトーヨーカドーとヨークの統合によるオペレーション・販促・物流の効率化や、取り扱いアイテムの絞り込みを背景に、食品・日用品100品目を平均約10%値下げした実績もある。こうしたコスト低減のノウハウが、クリスマスケーキの価格設計にも何らかの形で反映されている可能性はある。ただし、その具体的な手法について同社は明らかにしていない。

 そして、むしろ重要なのは「なぜ安くするのか」だ。クリスマスケーキは年に一度の特別商品だが、家計から見れば数千円の支出である。物価高が続けば、「今年は小さくする」「買わない」という判断も起こりやすい。そこで人気No.1の定番を手の届きやすい価格帯に残せば、購入そのものを諦める客を減らせる。

「加藤幸樹シェフ監修 まるごと静岡県産 最高級マスクメロンケーキ」税込み24,840円
「加藤幸樹シェフ監修 まるごと静岡県産 最高級マスクメロンケーキ」税込み24,840円

 今年のラインアップを見ると、その狙いはさらに分かりやすい。2,000円台の小型ケーキがある一方、監修商品やコラボ商品、税込み2万4,840円の最高級マスクメロンケーキまでそろえる。つまり、すべてを安くするのではない。入口となる定番商品の価格を抑えながら、高付加価値商品では選ぶ楽しさを広げているのである。

 定番ケーキの価格抑制は、単なるサービスではない。節約志向の客を取りこぼさず、同時にクリスマス売場全体への入口を広げるための戦略と考えれば腑に落ちる。値上げが当たり前になった時代だからこそ、「上げ幅を抑える」「あえて下げる」という判断そのものが、強い販促メッセージになると言えるだろう。

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