
商品開発というと、「これが好きだから作りたい」「もっとおいしいものを届けたい」といった“好き”から始まるイメージが強い。しかし、人気菓子ブランド「(NO) RAISIN SANDWICH(ノーレーズンサンドイッチ)」の出発点は、ほぼ正反対だ。
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きっかけは、フードエッセイスト・平野紗季子氏の「レーズンは嫌いだけれど、レーズンサンドを食べてみたい」という思いだった。
レーズンサンドのサブレやバタークリームには心惹かれる。しかし、肝心のレーズンが苦手で食べられない。それなら、レーズン以外の果実を挟めばいい。そんな“不満”から生まれたのが同ブランドだ。
これは商品開発を考えるうえで、なかなか興味深い。「嫌い」、「苦手」などの感情は、一見するとネガティブだ。しかし裏返せば、「ここが変われば買いたい」という強い需要でもある。
例えば、甘いものは好きだが甘すぎるものは苦手。ケーキは好きだが生クリームが多すぎるものは苦手。モンブランは好きだが洋酒が強いものは避けたい。こうした小さな不満は、既存の商品を完全に否定しているわけではない。むしろ「あと少し違えば、自分も楽しめるのに」という願いに近い。

「ノーレーズンサンドイッチ」の場合、それを名前にまでしてしまったのが面白い。「NO」と明確に掲げながら、単純にレーズンを敵役にするのではなく、レーズン入りとそれ以外のサンド菓子を一緒に展開してきた。現在では、レーズンサンドだけを詰め合わせた商品まで存在する。
つまり、「嫌い」が出発点のブランドが、「好きな人も嫌いな人も楽しめる」方向へ拡大したのである。
2026年には、10月6日よりセブン−イレブンで展開した商品が販売地域を全国へ拡大するなど、その入口も広がっている。商品開発では、つい「みんなが好きなもの」を探したくなる。しかし、新しい商品を生むヒントは、案外「なぜ自分はこれを買わないのか」という側に隠れているのかもしれない。
“好き”を突き詰めるだけがブランドではない。「ここが嫌い。でも、それ以外は好き」。そんな少し面倒な感情こそ、まだ世の中にない商品を生む種になるのかもしれない。
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