
街の洋菓子店を取り巻く環境が厳しさを増している。東京商工リサーチによると、2026年1〜7月の「菓子小売業」の倒産は45件に達し、同期間として過去30年で最多となった。この数字には洋菓子店だけでなく、和菓子店も含まれる。帝国データバンクの調査でも、2025年度の「洋菓子店」の倒産は65件と、2年連続で最多を更新している。
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背景には、小麦粉やバター、クリーム、カカオなどの原材料価格の高騰がある。人件費や光熱費の負担も重い。値上げをすれば客離れが心配され、据え置けば利益が減る。経営者にとって難しい状況が続いている。
一方、コンビニスイーツや大手洋菓子チェーンの品質は、近年大きく向上してきた。商品開発力や安定した供給体制、購入のしやすさなど、それぞれに確かな強みがある。消費者にとって選択肢が増えることは歓迎すべきことであり、その企業努力には敬意を払いたい。
では、街の洋菓子店は何を強みにすべきなのか。単純な価格競争ではなく、小規模だからこそ提供できる「プラスアルファ」に目を向ける必要があるだろう。
まず考えられるのが、意思決定の速さだ。大手企業では新商品の開発から販売まで、多くの部署による調整が必要になることもある。一方、個人店なら店主の判断で、比較的短期間に商品を投入できる場合がある。
例えば、その時期に入荷した果物を生かした限定ケーキを販売する。客の反応を見ながら味や構成を調整する。SNSで話題のスイーツをすぐ取り入れる。こうした小回りの利く商品開発は、小さな店にとって強みになり得る。ただし、新商品を次々と投入するだけでは意味がない。その店らしい味や個性を、どれだけ表現できるかが問われる。
もう1つは、客との距離の近さである。誕生日ケーキを注文する際、好みや飾り付けについて相談できる。贈り物を選ぶときには、渡す相手や予算に合わせて商品を提案してもらえる。もちろん、大手にも丁寧な接客やオーダー対応を行う店舗はある。それでも、作り手と直接やり取りしやすい環境は、個人店ならではの魅力になり得る。
地域とのつながりも見逃せない。地元産の果物を使った商品や、商店街の行事に合わせた限定品。あるいは、何年も変わらず販売され、近隣住民に親しまれてきた看板ケーキ。全国的な知名度がなくても、その地域で支持され続けることには大きな意味がある。
もっとも、こうした取り組みが簡単であるとは限らない。少人数の店が全ての要望に応じれば、作業負担は増える。限定商品を増やしすぎれば、廃棄ロスにつながる可能性もある。
だからこそ、強みを絞ることも必要だ。看板商品を徹底的に磨くのか、オーダーケーキに力を入れるのか。それとも、季節限定品の開発で個性を打ち出すのか。無理なく継続できる方法を選び、手間や品質に見合った価格を設定することが欠かせない。
もちろん、商品の味や品質が大前提であることに変わりはない。その上で、「この店だから買いたい」と思ってもらえる理由を、いくつ積み重ねられるか。
大手と同じことをする必要はない。むしろ、小さな店だからこそできる工夫に、活路を見いだせるのではないか。
決して楽な道ではない。原材料費の高騰など、個々の努力だけでは解決できない問題も多い。それでも、価格以外で選ばれる理由を考え続けなければ、経営の厳しさは変わらないだろう。
街の洋菓子店が持つ独自の魅力を、いかに商品やサービスの価値へと結び付けるか。その積み重ねが、令和の時代に生き残る鍵の1つになりそうだ。
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