夫失ったカフェ経営者の前に凄腕ケーキ職人が現れ……人間讃歌描く映画『彼が愛したケーキ職人』

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2018年のイスラエルのアカデミー賞「オフィール賞」にて作品賞を含む最多9部門でノミネートされた他、第52回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭のエキュメニカル審査員賞など世界70以上の映画祭で受賞およびノミネートした実績を誇る映画『彼が愛したケーキ職人』(17年)。国籍や文化、宗教や性差を超えてめぐり逢う男女の美しくも切ない人間ドラマが展開される。

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物語の舞台は独ベルリン。カフェを営む青年トーマスは、腕のいいケーキ職人。ある日、なじみの客オーレンの息子の誕生日プレゼントを相談したことをきっかけに、2人の仲は急接近。1年後にはアパートで共に暮らす恋人関係になっていた。

だが2人が愛し合う時間は限られ、オーレンはいつも妻が暮らすエルサレムに帰ってしまう。そしてある日、1ヵ月で戻るはずだったオーレンから連絡さえ来ない。不安に駆られ、彼の会社を訪ねたトーマスは信じられない事実を知ってしまう。

彼はエルサレムで事故に遭い、すでに亡くなっていた。消沈するトーマスは、彼の足跡をたどり、エルサレムを訪れる。そこで彼の妻アナトが営むカフェに何度か通う内に、店員として雇い入れられることに。やがてトーマスの作るケーキが評判を呼ぶと共に、トーマスとアナトの距離も近づいていくのだが……、というストーリーが展開される。

その後注目を集めるLGBTQ作品の先がけの一つとなる同作を手がけたのは、当時無名の若手監督にして自身もゲイであるイスラエル人監督オフィル・ラウル・グレイツァさん。同じ男を愛した男女を繊細に描く人間ドラマとして、高い評価を受けている。

また、主人公トーマスを演じたティム・カルクオフさんは、本作にて2018年ヴァラエティ誌が選ぶ「観るべき10人のヨーロッパの俳優たち」に選出。妻アナトを演じたサラ・アドラーさんは、ソフィア・コッポラ監督作にも出演する人気女優。同じ男を愛し、同じ喪失感を抱える男女という繊細な役を演じた、2人の演技にも注目だ。

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