
ケーキと言えば、クリームやフルーツで美しく飾り付けられた完成品を購入するもの。そんな従来のイメージとは異なり、あえて仕上げを購入者に委ねる商品が登場している。洋菓子メーカーのサンラヴィアンが発売するスポンジケーキや、ローソンが展開する飾りのないクリスマスケーキだ。なぜ、あえて「完成させない」という選択肢を用意するのか。
【今年はコスパ重視】ローソン:クリスマスケーキ全31種を全国展開 トッピングなし・飾りなしケーキなど3.5号以下ミニサイズの品目数を昨年の2倍に

岡山県の洋菓子メーカー「サンラヴィアン」は11月1日より、全国のスーパーマーケットや生協などで、「北海道産バター100%使用 国産小麦であつらえたジェノワーズ」を発売する。価格は税込み1,080円。国産小麦や北海道産バターを使い、隠し味にイタリア産レモンリキュール「リモンチェッロ」を採用したスポンジケーキだ。
特徴は、5号サイズの2枚スライス仕様で、家庭で自由にデコレーションできること。生クリームやイチゴを用意すれば、自分好みのショートケーキを作ることもできる。スポンジを焼く工程を省きながら、仕上げの楽しさを味わえる商品だ。

一方、ローソンも2026年のクリスマス向けに、飾りやトッピングを省いた「Uchi Café シンプルショートケーキ 5号」と「Uchi Café シンプルチョコレートケーキ 5号」を用意する。そのまま食べられるだけでなく、購入者がフルーツやチョコペンなどで自由に飾り付けられる。
両社の商品は似ているようで、提供するものが異なる。サンラヴィアンはスポンジという土台を販売し、ローソンはクリームなどで仕上げたシンプルな完成品を用意する。購入後に必要な作業量は違うものの、共通するのは「最後のひと手間」を消費者が選べる点だ。
こうした商品には、少なくとも3つの需要が考えられる。
第1に、手作りの負担を減らしたいという需要だ。家庭でケーキを一から作る場合、生地の計量や泡立て、焼成、冷却など、複数の工程が必要になる。特にスポンジ作りは失敗する可能性もあり、初心者にとってハードルが高い。土台だけ購入できれば、調理時間を短縮しながら、手作りの雰囲気を楽しめる。
第2に、好みを反映させたいという需要である。市販のケーキは基本的に、販売者が味や見た目を決める。しかし、飾り付けを任せる商品なら、フルーツの種類やクリームの量などを調整できる。家族の誕生日に好きな果物を並べたり、子どもと一緒にチョコペンで絵を描いたりすることも可能だ。
第3に、価格を抑えたいという需要もある。ローソンは2026年、手頃な価格帯のクリスマスケーキを拡充している。飾りを省いた商品は、豪華な装飾を求めない消費者にとって合理的な選択肢になる。ただし、別途フルーツや菓子などを購入すれば、必ずしも総額が安くなるわけではない。
さらに注目したいのが、ケーキを「買って食べるもの」から「買って楽しむもの」へ変える可能性だ。完成品は箱を開けた瞬間が見せ場になる。一方、自由に飾れる商品は、食べる前の時間にも価値を生み出せる。家族や友人と仕上げる過程そのものが、イベントの一部になるからだ。
もっとも、こうした販売方法がすべての洋菓子店に適しているとは限らない。職人による繊細なデコレーションや、素材の組み合わせこそが商品の魅力である店舗も多い。完成度の高さに対価を支払いたい消費者にとって、仕上げを任されることは必ずしも歓迎されないだろう。
それでも、選択肢としての価値は十分にある。すべてを職人に任せたい人もいれば、難しい工程だけを省き、最後は自分で作りたい人もいる。求めるのは単なる時短ではなく、「どこまで手作りしたいか」を自分で決められる自由なのかもしれない。
ケーキの価値は、完成された美しさだけで決まるものではない。あえて仕上げを残すことで、消費者が参加できる余白を生み出す。今後は洋菓子店でも、完成品と並んでスポンジ単体やシンプルな土台を販売する動きが広がる可能性がある。
ケーキを最後まで完成させないこと。それは手抜きではなく、完成する楽しみを購入者に渡すという、新しい商品価値の提案だと言えるのかもしれない。
【関連記事】
【実食レポ】ファミマ「チョコのスティックケーキ」は潔いほど濃厚 甘いものを欲する人におすすめの174円スイーツ
大丸福岡天神店:阿蘇産イチゴのタルトや大丸限定ケーキなど登場 2026年クリスマスケーキの予約受付中
DEAN & DELUCA:人気パティスリー7店のケーキなど全11種展開 2026年クリスマスケーキ、11月6日より予約受付開始 オリジナルの新作は「ダブルストロベリーショートケーキ」
