【世界観を売る】なぜホテルスイーツは「物語」を付けたがるのか? その背景を考察

「アフタヌーンティーパーティ vol.5 La Forêt d'Automne ~秋の森の舞踏会~」イメージコラム
「アフタヌーンティーパーティ vol.5 La Forêt d'Automne ~秋の森の舞踏会~」イメージ
「アフタヌーンティーパーティ vol.5 La Forêt d'Automne ~秋の森の舞踏会~」イメージ
「アフタヌーンティーパーティ vol.5 La Forêt d’Automne ~秋の森の舞踏会~」イメージ

 ホテルのアフタヌーンティーを見ていると、近年は「イチゴ」「栗」「チョコレート」といった食材だけではなく、そこに1つの“物語”を設定する企画が目立つ。一体なぜなのか?

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 例えば、「HOTEL THE MITSUI KYOTO」が2026年夏に展開したアフタヌーンティーのテーマは「夏祭り」。一皿ごとに物語を紡ぐコース仕立てとし、スイーツやセイボリー、ドリンクまで1つの世界観で構成した。オリエンタルホテル広島では「夏の庭園で過ごすティーパーティー」をテーマに、ミツバチを模したショコラや苔玉をイメージしたアイスなどを組み込んだ。単にマンゴーなどの夏素材を並べるのではなく、「庭園」という舞台を与えている。

 さらに物語性が強いのが、「リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション」の「La Forêt d’Automne ~秋の森の舞踏会~」。イチジクや栗、シャインマスカットといった秋素材を、「森の舞踏会」という設定の中に据えた。東京ステーションホテルでは2026年秋、「旅するアフタヌーンティー」を展開。世界各地の紅茶と料理を組み合わせ、東京駅から世界を巡るような体験として組み立てている。

「ヴォワヤージュ・デュ・カカオ」イメージ
「ヴォワヤージュ・デュ・カカオ」イメージ

「旅」は別のホテルにも登場する。リーガロイヤルホテル東京が10月から展開する「Voyage du Cacao」は、その名の通り「カカオの旅」。産地や特徴の異なるショコラを一品ずつ味わうことで、1つの素材から“旅程”を作り出している。

 なぜ、ここまで物語が必要なのか。

 その背景には、ホテルスイーツが味わいだけでは差別化しにくくなっていることが考えられる。イチゴ、桃、メロン、シャインマスカット、栗など人気素材は多くのホテルで重なる。同じ素材を使えば、商品写真だけでは似た印象になることもある。

「アフタヌーンティーパーティ vol.5 La Forêt d'Automne ~秋の森の舞踏会~」イメージ
「アフタヌーンティーパーティ vol.5 La Forêt d’Automne ~秋の森の舞踏会~」イメージ

 そこで「庭園」、「舞踏会」、「旅」といった設定が効いてくる。1つひとつのケーキが物語の登場人物になり、スタンド全体が一つの作品になるからだ。「シャインマスカットのアフタヌーンティー」より「秋の森の舞踏会」の方が、そこで過ごす時間まで想像しやすい。

 これはホテルだからこそ成立しやすい戦い方でもある。ホテルには眺望、庭園、建築、食器、サービスなど、菓子以外にも世界観を構成できる材料が豊富にある。スイーツ専門店が一個のケーキを売るのに対し、ホテルは約2時間の“体験”そのものを商品にできる。

 ホテルスイーツの競争は、味や見た目だけではなく、「どんな世界に客を連れていけるか」という段階へ進みつつあるのかもしれない。ケーキに物語を付けているというより、物語の中にケーキを置いていると言えそうだ。

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