
百貨店の食品売り場では、ときどき不思議な現象が起きる。「栗スイーツ約45種」、「モンブラン16種」といった具合に、1つの素材や1つの菓子をテーマに、同じ種類のスイーツが一斉に集う企画を展開する。
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例えば今年9月、大丸東京店では「栗スイーツ特集」を展開。個性派モンブランから和洋菓子まで約45種を揃えた。栗という一つの素材だけで、ケーキ、プリン、焼き菓子、和菓子などへ枝分かれしていく。
エキュート品川でも同時期、「Mont Blanc is ART 2026」を開催。王道だけでなく、柚子と組み合わせたもの、はちみつ漬け和栗を使ったもの、おはぎや羊羹など和素材を取り入れたもの、パンやカヌレとのハイブリッドまで、全16種のモンブランを展開している。うち10種は同施設ならではの特別な商品だ。

さらに大丸心斎橋店では9月から、大阪産さつまいも「夢シルク」をテーマにした「OIMOSANフェスタ」を開催。食品フロア約20ブランドが同じさつまいもを使ったメニューを展開した。10月には阪神梅田本店で「阪神モンブラン展Vol.3」も開催され、シェフが目の前で絞る「できたて」を軸に、会場そのものを栗一色にする。
一体なぜ、ここまで同じ素材を集めるのか。
理由の1つは、「リアルの場で比較する楽しさ」を作れるからではないか。モンブランを1個置くだけなら、消費者は「買うか、買わないか」を判断する。しかし16種類並べば、「どれを選ぶか」に変わる。和栗か洋栗か、濃厚か軽やかか、王道か変わり種か。商品同士の違いそのものがコンテンツになる。
これはネット通販では再現しにくい百貨店や商業施設の強みでもある。売り場を歩き、複数ブランドの商品を一度に眺め、「こんなモンブランもあるのか」と発見する。単品の商品力だけでなく、「ここに来れば一気に比べられる」という編集された売り場そのものが来店理由になる。

実際、この手法は栗だけではない。2026年春の大丸京都店の「いちごフェスタ2026」では、「あまおう」、「あまりん」、「まりひめ」、「淡雪」など複数品種を集め、甘みや酸味、食感を比較できる「いちごマトリックス」まで掲出した。
百貨店が売っているのは、45種類の栗スイーツそのものだけではない。「45種類から選べる」という体験でもある。同じ素材を集めれば集めるほど、1つひとつの商品ではなく、売り場全体が1つの巨大な商品になっていくのである。
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