
大手メーカーが展開する最新スイーツの原材料や商品説明を見ていると、少し不思議な組み合わせに出会うことがある。カスタードクリームとホイップクリーム、生クリームと練乳、ミルキークリームとミルキーソース。いずれも甘さや乳製品のコクを特徴とする素材だ。なぜ、あえて似た系統の甘味を1つの商品に重ねるのだろうか。
【実食レポ】手の平からはみ出るボリューム シャトレーゼの「クリームサンドアップルパイ」は秋の甘味がぎっしり
例えば、シャトレーゼが10月14日に発売した「クリームサンドアップルパイ」。キャラメリゼしたリンゴと自社炊きのカスタードクリームをパイ生地で焼き上げ、さらにホイップクリームを絞り込んでいる。カスタードクリームだけでも成立しそうなアップルパイだが、ホイップクリームを加えることで、卵の風味を伴うコクとミルキーな味わいが重なる。リンゴの甘味を中心に、複数の甘さが共存する構成だ。

ローソンが10月13日に発売した「Uchi Café×Milk とろける生クリームチーズタルト」も興味深い。チーズケーキと生クリーム、練乳を組み合わせた商品で、実食すると、最初にチーズケーキと生クリームの爽やかな味わいが広がり、その直後に練乳の濃厚な甘味が押し寄せてくる。似た乳製品の組み合わせでも、食べ進める過程で味の印象が変わるのだ。

さらに、不二家洋菓子店の「ミルキーモンブランタルト」は、北海道産れん乳を使ったミルキーソースに、ミルキークリームを重ねている。こちらは異なる甘さを楽しむというより、共通するミルキーな風味を重ねることで、ブランドの特徴である濃厚な甘味を一段と強調する構成だ。
これらに共通するのは、単に甘さを足すのではなく、甘さの質感や感じる順番を変えている点だろう。そもそも、同じ甘味でも、クリームとソースでは食感が異なる。ふんわりとしたホイップクリーム、なめらかなカスタードクリーム、とろりとしたミルクカスタード。それぞれ口の中で広がる速度や舌触りが違う。味の方向性が近くても、食感に差があれば、単調になりにくい。

また、甘さを段階的に感じさせる効果もある。最初から最後まで同じ味が続くのではなく、軽やかな甘味の後に濃厚な甘味が現れる。こうした変化は、1つのスイーツを食べ終えるまでの満足感にもつながると考えられる。
商品開発の観点でも意味がある。例えば、ミルクの風味を前面に押し出したい場合、まったく異なる素材を加えるより、同系統のクリームやソースを組み合わせた方が、商品の特徴を明確に打ち出しやすい。複数の素材を使いながら、味の方向性を統一できる格好だ。

ただし、必ずしも甘味を重ねれば、おいしくなるとは限らない。濃厚なクリームとソースを組み合わせれば、甘さが強くなりすぎたり、後半に重たさを感じたりする可能性もある。酸味や塩味、香ばしさ、食感の異なる生地など、甘味を引き立てつつ単調さを防ぐ要素が重要になるだろう。

似た甘さを重ねることは、一見すると材料の重複にも思える。しかし、その役割を分解すると、味の奥行きを生み、食感に変化をつけ、商品の特長を強調するという複数の効果が見えてくる。
重要なのは、何種類のクリームを使用しているかではない。似た甘さの間に、どれだけ違いを作れるか。 そこに、スイーツの商品設計の巧みさが表れるのではないだろうか。
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