【考察】開業35日で2店舗目 スイーツブランドは“じっくり育てる”必要がある?

「リストリック 伊勢丹新宿店」イメージコラム
「リストリック 伊勢丹新宿店」イメージ
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 新しいスイーツブランドは、まず1号店で実績を積み、知名度や売上を伸ばしてから2号店へ進出する。そんな段階的な店舗展開は、もはや唯一の正解ではないのかもしれない。

【関連記事】東京都:代官山開業からわずか1か月 早くも2店舗目「リストリック」伊勢丹新宿店に10月28日オープン

「リストリック 伊勢丹新宿店」イメージ
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 注目したいのが、シェフパティシエ・浅井拓也さんが手がける「リストリック(L’HISTORIQUE)」だ。2026年9月23日に東京・代官山で本店を開業し、わずか35日後の10月28日には、伊勢丹新宿店に2店舗目をオープンさせた。

 35日という期間は、新店舗の経営が安定しているかを判断するには短い。季節による需要の変動や、開業直後の話題性が落ち着いた後の売上も、十分に見極められるとは言い難い。

 ただし、今回の出店を単純なスピード経営と捉えるのは早計だろう。百貨店への進出には、事前の交渉や商品供給体制の整備などが必要になる。代官山本店の開業前から、複数店舗での展開を計画していた可能性もある。

 むしろ興味深いのは、両店舗の役割が異なることだ。代官山本店には6席のカウンターが設けられ、アシェットデセールやパフェも提供する。パティシエの技術や感性を、出来立ての一皿を通じて伝えられる場所だ。単に商品を購入するだけではなく、ブランドの世界観そのものを体験する価値がある。

 一方、伊勢丹新宿店は百貨店の地下食品売り場に位置する。仕事帰りの買い物客や、手土産を探す人などとの接点が期待できる。代官山まで足を運ぶことのなかった層にも、ブランドの存在を知ってもらう機会が生まれる。

 つまり、1号店は魅力を深く伝える場所、2号店は商品を広く届ける場所という役割分担が考えられる。両店舗は単純な複製ではなく、異なる機能を持つ拠点だと言える。

「リストリック 伊勢丹新宿店」イメージ
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 この組み合わせには、相乗効果も期待できる。百貨店で購入したケーキをきっかけに、本店のデザートを体験したくなる人もいるだろう。逆に、本店で魅力を知った顧客が、伊勢丹新宿店で手土産を購入することも考えられる。

 重要なのは、どちらが先に開業したかではない。それぞれの店舗が、顧客に異なる価値を提供できるかどうかだ。

 もちろん、早期の多店舗展開にはリスクもある。製造量が増えれば、品質の維持や人材確保の難易度も上がる。特に、生菓子を中心に扱うパティスリーでは、商品の完成度を保ちながら供給を拡大することが欠かせない。

 百貨店での販売が好調でも、それが本店への来店につながるとは限らない。双方が独立して収益を生みながら、ブランド全体の価値を高められるかが問われる。

 それでも今回の事例は、スイーツブランドの成長戦略に1つの示唆を与える。「1店舗目が成功したから2店舗目を出す」という順番だけでなく、最初から異なる役割を持つ店舗を組み合わせるという考え方だ。

 ブランドをじっくり育てることと、店舗展開を急がないことは、必ずしも同じ意味ではない。複数の拠点を通じて、認知と体験を同時に積み重ねる方法もある。

 問われるのは出店の速さではなく、各店舗を設ける理由だ。開業35日で2店舗目という展開は、「ブランドは1店舗ずつ育てるもの」という固定観念を見直すきっかけになりそうだ。

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