”かわいい”が売りの不二家が「黒いケーキ」を売るワケ ブランドの裏側を商品化する効果

「裏不二家の日」キャンペーンのイメージコラム
「裏不二家の日」キャンペーンのイメージ
「裏不二家の日」キャンペーンのイメージ
「裏不二家の日」キャンペーンのイメージ

 不二家洋菓子店は、8月22日の「裏不二家の日」に合わせ、ブラックをテーマカラーにした限定スイーツを展開する。真っ黒に仕上げた「ティラミスミルクレープ」や「ブラックなチョコケーキ」、黒ゴマを使ったシュークリームなど、通常の店頭とは異なる雰囲気の商品が並ぶ。キャンペーンは2023年に始まり、2026年で4年目を迎える。明るく親しみやすいイメージの不二家が、”黒いケーキ”を売り出すのは一体なぜなのか?

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 企業が自社の「裏側」を見せる企画は、一見すると危うい。本来のブランドイメージと正反対の商品を出せば、統一感が崩れる可能性もあるからだ。

 それでも「裏不二家」が成立するのは、普段の不二家像が十分に定着しているためだろう。ペコちゃんやミルキーに象徴される、かわいらしく安心感のある世界観があるからこそ、黒くて少し怪しい商品が意外性を持つ。裏側は本家を否定するのではなく、本家との差によって成立している。

8月14日に発売される「ティラミスミルクレープ」税込み537円
8月14日に発売される「ティラミスミルクレープ」税込み537円

 近年の食品では、「黒」や「悪魔」、「背徳」、「禁断」といった言葉が珍しくない。ハーゲンダッツは2022年、濃厚な味わいを訴える期間限定シリーズ「悪魔のささやき」を発売した。有楽製菓は2024年、ブラックサンダーの限定商品「ブラックサンダーひとくちサイズ 甘MAX」で、「背徳感」や「悪魔的おいしさ」を前面に打ち出した。ファミリーマートも2025年、背脂やチーズなどを使った商品をそろえた企画を「月見背徳メシ」と名付けて展開している。

 これらの言葉は、商品を本当に危険なものに見せるためではない。「食べてはいけない気がするが、食べたい」という小さな葛藤を、娯楽として商品化する装置になる。健康や節制が意識される時代ほど、期間限定の“言い訳”は購買の後押しになる。

8月14日に発売される「ブラックなチョコケーキ」税込み561円
8月14日に発売される「ブラックなチョコケーキ」税込み561円

 SNSとの相性もいい。いつものケーキより、真っ黒なケーキの方が写真一枚で違いが伝わる。「あの不二家が黒い」という文脈まで含めて、投稿の材料になるからだ。普段は不二家を利用しない層にも、話題を入口として接触できる。

 ただし、刺激的な表現が常態化すれば効果は薄れる。「裏」がいつでも買えるようになれば、それは裏ではない。限定期間を設け、本家の商品や世界観と明確に区別することが重要になりそうだ。

 裏ブランドは、本家を傷つける存在とは限らない。むしろ本家の輪郭がはっきりしている企業ほど、反対側の表情を”安全に遊べる”。不二家の黒いケーキは、長年築いてきた「かわいい不二家」があるからこそ成立する商品なのかもしれない。

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