
「推し活」は、若者が推し色のグッズを並べて写真を撮る――そんなイメージだけでは語れなくなってきた。近年のスイーツ市場では、大人の女性を意識し、推し活に「上質さ」や「非日常」を組み合わせる動きが目立つ。
【関連写真】「クラウン&ティアラ・コレクション」他イメージ2枚

大阪・梅田の「梅田 ブルーバード」が9月1日より提供を始めた新作アニバーサリーケーキ「クラウン&ティアラ・コレクション」は、その象徴的な例だ。王冠やティアラを飾り、推しカラーにも対応するリボンを用意。さらに地上100メートルの眺望と、全席窓向きの2名専用シートを組み合わせる。店側も「大人の女性」を明確に掲げ、かわいいだけでなく、洗練された空間で上品に祝いたい需要を狙っている。

この流れは同店だけではない。札幌東急REIホテルは、9色から推し色を選び、自分でロールケーキやパフェを飾れる「メロいろスイーツセット」を展開。仙台ロイヤルパークホテルも、7色から選べるグラスとメッセージプレートを付けた「ハロウィン推し活プラン」を販売している。推し色を取り入れるだけでなく、ホテルという非日常の場所そのものを推し活の舞台にする取り組みだ。

ここから見えてくるのが、推し活の“グッズ消費”から“空間消費”への広がりである。もちろんアクリルスタンドや写真、ぬいぐるみといったグッズは現在も推し活の重要な存在だ。一方、飲食店やホテル側では、そうしたグッズを持ち込んで撮影する楽しみ方とも相性がよく、ケーキやドリンクだけでなく、特別な席や景色を含めて、店舗そのものを「推し活のための場所」として提案する動きが出ている。

ホテルニューオータニ大阪で開催されたシナモロールとのコラボスイーツビュッフェも、その延長線上にある。予約開始直後から反響を集め、開催前に8月末まで会期延長を決定。平日6,500円、土日祝日7,000円という価格帯でも需要が動いた。好きなキャラクターの世界観に囲まれながら食事を楽しむこと自体が、1つの商品になっていると言える。

一方で、「ご褒美」を正面から商品名に掲げる動きも続く。ストリングスホテル 名古屋の「大人のご褒美パフェ」は、2026年夏の桃版で72作品目。シリーズとして長く展開されている点からも、自分のために少し贅沢な時間を買う需要が、一過性ではないことがうかがえる。

推し活と自分へのご褒美。一見別の消費行動に見えるが、共通するのは「モノ」だけでなく、「気分が上がる時間」にお金を払うことだ。物価高の中、何にでもお金を使うのではなく、自分が本当に好きなものに集中してお金を使う。その対象がケーキだけでなく、眺望、席、ホテル空間、写真映えする演出まで広がっている。

大人女性の推し活を巡る競争は、商品そのもののかわいさだけでは決まらない時代に入りつつある。次に問われるのは、「そこでしか過ごせない時間」をどこまで作れるか。スイーツ業界にとって推し活は、客単価を上げるだけでなく、店やホテルそのものを目的地に変える集客策になりそうだ。


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