コンビニ各社が「増量キャンペーン」で争うワケ 大手だからできる“価格据え置き&増量のお祭り”が物価高時代の来店理由になる

3月に販売されたファミリーマート「天使のチーズケーキ」税込み250円(右が増量品)コラム
3月に販売されたファミリーマート「天使のチーズケーキ」税込み250円(右が増量品)
セブン−イレブン「かじるニューヨークチーズケーキ」税込み291円
セブン−イレブン「かじるニューヨークチーズケーキ」税込み291円

 コンビニ各社が次々打ち出す「増量キャンペーン」が、近年存在感を増している。

【関連記事】セブン-イレブン:NYチーズケーキは2.5倍「創業感謝祭」”感謝盛り”で人気商品を50%以上増量
ファミリーマート「うまくて、ドでかい!お値段そのまま なぜか 45%増量作戦」イメージ
ファミリーマート「うまくて、ドでかい!お値段そのまま なぜか 45%増量作戦」イメージ

 ファミリーマートは今年3月、創立45周年を記念して「うまくて、ドでかい!お値段そのまま なぜか 45%増量作戦」を実施。2021年の創立40周年をきっかけに始まった同企画は6年目を迎え、2026年は過去最大の45パーセント増量に挑戦した。対象には「ファミマ・ザ・クレープ 生チョコ」や「天使のチーズケーキ」など、スイーツ好きにもなじみ深い商品が並んだ。

セブン−イレブン「ふわっと生どら焼 つぶあん&ホイップ」税込み213円
セブン−イレブン「ふわっと生どら焼 つぶあん&ホイップ」税込み213円

 セブン-イレブンも5月12日より「創業感謝祭」を開催。日本国内での営業開始52周年を記念し、人気11商品を50パーセント以上増量する企画を展開した。中でも「かじるニューヨークチーズケーキ」は全体量を従来比約2.5倍にアップ。一口サイズの満足感どころではないボリュームだ。

ローソンストア100「ロ――――ルケーキ りんご&カスタード」税込み171円
ローソンストア100「ロ――――ルケーキ りんご&カスタード」税込み171円

 ローソンストア100も「デカ盛りチャレンジ」を継続的に展開している。2026年1月には全31品を週替わりで発売し、物価高や内容量の実質的な減少が続く中で「出費は抑えたいが、満足感は妥協したくない」という生活者の声に応える企画として打ち出した。さらに5月にも、9枚入りの「ロ――――ルケーキ りんご&カスタード」など、値段据え置きでボリュームアップした商品を展開している。

 では、なぜ日本のコンビニはここまで「増量」で争うのか。

 最大の理由は、消費者にとって“わかりやすいお得感”があるからだ。値引きは数字を見れば得だとわかるが、増量は目で見て、手で持って、食べて実感できる。価格据え置きでサイズが大きくなる、具材が増える、クリームがたっぷりになる。その変化は店頭でもSNSでも伝わりやすい。

3月に販売されたファミリーマート「天使のチーズケーキ」税込み250円(右が増量品)
3月に販売されたファミリーマート「天使のチーズケーキ」税込み250円(右が増量品)

 特にスイーツやパン、おにぎり、弁当といったコンビニ商品は、日常的に購入される身近な存在だ。だからこそ「いつもの商品が大きくなっている」という驚きは強い。高級感のある新商品よりも、普段から知っている定番商品の増量の方が、生活者にとっては直感的に響く場合がある。

 もう1つの理由は、物価高の中で「値上げ」ではなく「満足感」を前面に出せる点にある。食品価格の上昇が続く中、消費者は価格に敏感になっている。一方で、コンビニに求められるのは単なる安さだけではない。手軽さ、近さ、品質、話題性、そしてちょっとしたご褒美感。増量キャンペーンは、その複数の要素を一度に満たせる。

 そして、この企画は大手コンビニだからこそ成立しやすい。

 値段据え置きで量を増やすということは、当然ながら1商品あたりの利益率を圧縮する。原材料費、包材費、物流費、人件費が上がる中で、単純に考えれば「同じ価格でたくさん入れる」のは企業にとって負担が大きい。小規模な店が長期間続けるには、かなり難しい施策だろう。

ローソン「盛りすぎ!ふわ濃チーズケーキ」税込み319円
ローソン「盛りすぎ!ふわ濃チーズケーキ」税込み319円

 しかし、大手コンビニには大量仕入れ、大量生産、大量販売の仕組みがある。全国規模の店舗網、専用工場、物流網、商品開発力、販売データの蓄積。これらを生かせるからこそ、期間限定で大胆な増量企画を組むことができる。大量に作り、大量に届け、大量に売る前提があるから、話題性のある商品を一気に展開できるのだ。

 もちろん、増量商品そのものだけを見れば、通常商品より利益率は下がる可能性が高い。しかし、それを集客のための広告費と考えれば、話は変わってくる。

 テレビCMやウェブ広告に大きな費用をかける代わりに、商品そのものを“広告”にする。大きくなったクレープ、分厚くなったチーズケーキ、9枚入りのロールケーキが店頭に並ぶ。消費者が写真を撮り、SNSに投稿し、ニュースや口コミで広がる。つまり、増量分は単なるコストではなく、来店を促すための投資でもある。

 コンビニにとって重要なのは、増量商品だけが売れることではない。増量キャンペーンをきっかけに来店してもらい、飲み物、サラダ、ホットスナック、日用品、ついで買いの商品にも手が伸びることだ。1品の利益率を少し削っても、来店客数が増え、買い回りが広がれば、店舗全体としては十分に意味がある。

 この構図は、まさに「入口商品」の考え方に近い。消費者を店に呼び込む目玉商品があり、その周辺で別の商品も動く。増量スイーツや増量おにぎりは、店頭で買える販促物であり、食べられる広告でもある。広告なのにお腹も満たせる。かなり優秀である。

 さらに、増量企画は“お祭り”にしやすい。ファミリーマートは創立45周年、セブン-イレブンは創業52周年と、周年記念と結びつけることで、単なる販促ではなく感謝企画として見せられる。ローソンストア100の「デカ盛りチャレンジ」も、名称そのものに挑戦感があり、商品棚をのぞく楽しさにつながっている。

ローソン「盛りすぎ!プレミアムロールケーキ」税込み214円
ローソン「盛りすぎ!プレミアムロールケーキ」税込み214円

 この「イベント化」は、コンビニにとって重要だ。コンビニは日常に近すぎる存在であるがゆえに、来店理由が固定化しやすい。飲み物を買う、昼食を買う、ATMを使う。そこに「今だけ大きい」、「なくなり次第終了」、「第1弾・第2弾」といった期間限定の仕掛けが加わると、消費者の足を動かす理由になる。

 SNSとの相性もよい。増量商品は、写真で伝わる。通常サイズとの比較、手に持った時の大きさ、クリームの量、カット面の迫力。説明しなくても「これは大きい」と伝わる商品は拡散されやすい。特にスイーツはビジュアルの力が強く、ロールケーキが長い、チーズケーキが大きい、クレープが手からはみ出す、といった見た目のインパクトがそのまま話題になる。

 コンビニ各社が増量に力を入れるのは、消費者との関係をつなぎ直す効果があるからだろう。価格が上がる時代に、「同じ値段で、いつもより多い」という体験は、企業からのわかりやすいメッセージになる。難しい説明よりも、ひと回り大きなクレープや、9枚入りのロールケーキの方が雄弁なこともある。

 コンビニの増量キャンペーンは、単なる“大盛り競争”ではない。物価高の中で来店動機を作り、定番商品を再び話題化し、SNSで広がる視覚的な驚きを生み、ブランドの感謝や挑戦を伝えるための総合的な販促策だ。

 消費者にとっては「お得でうれしい」。企業にとっては「来店してもらう理由になる」。そしてメディアにとっては、写真も見出しも強い。つまり、増量キャンペーンは令和の経済状況と相性のよい“コンビニ型エンタメ”と化している。

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