
クリーム、チョコレート、フルーツ、洋酒、ナッツ。一般的にスイーツは、材料や層を重ねるほど豪華に見えやすい。しかし近年は、反対に使用する材料を絞り込み、素材そのものを前面に押し出す「引き算の商品」が登場している。
【全国12店舗展開】芸能人の名前だけに頼らない EXILE・TETSUYA「AMAZING COFFEE」が意外と長く続く理由愛知県豊橋市の「お亀堂 古民家café」が展開する「栗極(くりきわみ) 栗きんとんモンブラン」は、その象徴的な一品だ。熊本県産ブランド和栗「美玖里」の特選栗を使用し、原材料は栗と国産砂糖だけ。保存料、香料、着色料、乳化剤、乳製品も使用していない。価格は税込み2,300円で、注文を受けてから栗を約1ミリの細さに絞り、一皿ずつ仕上げる。
一般的なモンブランは、生クリームやバター、洋酒などを組み合わせ、コクや香り、食感の変化を生み出す。一方、「栗極 栗きんとんモンブラン」は、味を足すのではなく、栗以外の味をできるだけ取り除いた。材料が少ないから簡素なのではない。栗の香りや甘み、品質にごまかしが利かないため、むしろ素材選びや加工技術が商品の価値を左右する。
こうした引き算は、消費者にとっても理解しやすい。「栗と砂糖だけ」と説明されれば、商品の特徴を一瞬で把握できる。長い原材料表示を確認しなくても、何を味わう菓子なのかが伝わりやすく、保存料や着色料などを避けたい層にも選択肢となる。

健康志向を背景に、特定の材料を使わない商品も増えている。冷凍お取り寄せブランド「#100」は、2025年6月に、1個100キロカロリーで、砂糖、合成甘味料、小麦粉、添加物を使用しないスイーツセットを発売した。こちらは材料数そのものを減らすというより、「何を使わないか」を明確にすることで商品の個性を生み出した例である。

引き算の商品は、単に材料を省けば成立するわけではない。主役となる素材に品質や希少性がなければ、物足りなさにつながる可能性もある。だからこそ、ブランド栗や特別な卵、旬の果物など、単体でも価値を説明できる食材との相性が良い。
保存料を使用しない商品には、賞味期限が短くなりやすいというデメリットもある。製造後すぐに食べる必要があったり、冷蔵・冷凍など厳格な温度管理が求められたりするため、販売できる場所や数量が限られる場合もある。廃棄リスクや配送コストが高まりやすい点も、作り手にとっては無視できない。「余計なものを使わない」という価値は、鮮度管理や販売体制まで含めて成立するのである。
材料を重ねて豪華さを演出する「足し算」と、余計なものを取り除いて主役を際立たせる「引き算」。スイーツの高級感は、使われている材料の数ではなく、なぜその材料だけを選んだのかを説明できるかどうかで決まり始めている。
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