
果物は「旬が短いほどありがたい」のだろうか? 店頭にイチゴや桃、ブドウが並び始めると、季節の移り変わりを感じる。「今しか食べられない」という限定感も、旬の果物が持つ大きな魅力だ。一方、産地側では、その“短さ”を少しでも解消しようとする取り組みが続いている。
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福岡県では、品種をつなぐことで、1年を通じてミカンを楽しめる産地づくりを進めている。そのシーズン序盤を担うのが、9月から出荷される県育成の極早生ミカン「早味かん」だ。
ポイントになるのは、1つの品種を無理に1年中作ろうとしているわけではないこと。収穫時期の異なる品種を順番につなぎ、ある品種の旬が終われば次の品種へとバトンを渡す。つまり、「旬をなくす」のではなく「旬をリレーする」発想である。
生産者にとって、販売期間の短さは悩ましい。どれだけ人気の果物でも、収穫できる期間が限られれば、出荷や販売のチャンスも限定される。小売店や飲食店にとっても同様だ。安定して仕入れられる期間が長くなれば、それだけ商品展開の幅も広がる。
特にスイーツとの関係は深い。ケーキやパフェでは、果物そのものが季節感を決定することも多い。扱える時期が広がれば、洋菓子店は商品を販売できる期間を伸ばしたり、品種ごとの違いを生かした新商品を作ったりできる。
ただし、便利になりすぎれば別の問題も生まれる。
いつ店へ行っても同じ果物が並んでいたら、「今年もこの季節が来た」という感覚は薄れるだろう。希少性も下がり、「今食べなければ」という購買動機も弱くなる。旬の価値は、味わいだけでなく“限られた時間”にもあるからだ。
だから重要なのは、「一年中同じミカンを食べられる」状態を目指すことではないのだろう。9月には早味かん、次の時期には別の品種。それぞれの名前や味わい、収穫時期の違いまで伝えながらつないでいく。そうすれば、通年でミカンを楽しめても、1つひとつの品種にはきちんと旬が残る。
旬を長く引き延ばすのではなく、短い旬を次々につないでいく。「一年中食べられる」と「旬を大切にする」は、一見すると正反対に見える。しかし品種の違いまで楽しむ文化が育てば、両立する余地は十分にあるのかもしれない。
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