
昨今、全国各地で夜スイーツの需要が高まっている。そこには単に「夜に甘いものを食べたい人が増えた」以上の変化がある。注目したいのは、夜のライフスタイルそのものが変わってきていることだ。
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札幌・すすきの発祥の「シメパフェ」は、その象徴といえる。飲食後にラーメンではなく、甘さを抑えたパフェで一日を締めくくる文化として広がり、旬のフルーツやジュレ、自家製ソルベなどを重ねた華やかな一杯が支持されてきた。ケーキニュースの過去コラムでも、この夜パフェ需要が本州へ広がっていることを紹介している。
この流れを後押ししているのが、アルコール消費量の変化だ。国税庁「酒レポート 令和6年6月」によると、成人1人当たりの年間酒類消費数量は1992年の101.8リットルから2022年には75.4リットルへ減少。30年間で26.4リットル減った計算になる。JTB総合研究所も同データをもとに、日本人のアルコール飲料消費量は長期的に減少傾向にあると整理している。
この流れを後押しするかのように、国立がん研究センターも今年6月3日、がん予防に関する最新の指針「科学的根拠に基づくがん予防法5+1」を刷新し、飲酒に関する推奨を従来の「節酒する」から「飲酒をひかえる」へと見直した。少量の飲酒でもがんリスクが上昇することが示されたためで、がん予防の観点では“ほどほどに飲む”よりも“飲まないことがベスト”という方向性がより明確になった。健康意識の高まりとともに、夜の楽しみ方がアルコール一択ではなくなっていることは、夜スイーツ需要を考える上でも見逃せない。
そうした背景をもとに、多人数のアルコール摂取量が高い飲み会そのものへの距離感も変わっている。東京商工リサーチによる宮城県内企業120社への調査では、2025年の忘年会・新年会を実施すると回答した企業は55.8パーセントで、前年から4.9ポイント減少。開催を見送る理由では「開催ニーズが高くない」が69.6パーセントと最多だった。巷でも、「職場の飲み会などに参加せず、自身の生活を優先する」トレンドが強まり、飲み会は、かつてのような“当然の夜イベント”ではなくなりつつある。

そこで浮上するのが、アルコールを前提にしない夜の楽しみ方だ。例えば群馬県高崎市にプレオープンする「黒墨商店 高崎店」は、19時から23時まで、金曜・土曜は24時まで営業する夜専門のテイクアウト業態。仕事帰りや夕食後、友人との夜のおでかけ、カップルのドライブ途中などを想定し、「夜に立ち寄るスイーツ体験」を提案する。こうした夜帯のスイーツ提供を前提とするサービスが全国各地で増えている。

夜スイーツは、お酒を飲む人にも飲まない人にも門戸が開かれている。酔わずに会話を続けたい人、飲み会ではなく気軽な寄り道を選びたい人、一日の最後に少しだけ自分を甘やかしたい人。そうした需要を、夜スイーツが受け止める。
つまり夜スイーツの広がりは、甘味市場の拡大というより、夜時間の再編集とも言える。飲む、帰る、寝るだけだった夜に「甘く締める」という新しい余白が生まれている。夜スイーツは、令和の夜にちょうどいい“締めの一手”になり始めていると言えるだろう。
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