【考察】スタバはなぜ今「コンディメントバー」を復活させるのか コロナ禍を経て“自分で仕上げる体験”を令和向けに再構築

最後は自分でカスタマイズコラム
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 スターバックスが、コロナ禍をきっかけに機能を縮小していた「コンディメントバー」を、新たな形で復活させる。9月2日から全国の店舗(一部除く)に導入する「マイ カスタマイズ バー」だ。かつての仕組みをそのまま戻すのではなく、なぜ今、リニューアルして再導入するのだろうか。

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 日本でスターバックスが開業した当時、店舗にはミルクやはちみつ、シナモンなどを置いた「コンディメントバー」があり、購入後に客自身が好みに合わせてドリンクを仕上げられた。しかし、コロナ禍の拡大を受けて機能を縮小。その後も従来の形には戻らなかった。今回導入される「マイ カスタマイズ バー」は、基本5種類のアイテムを使い、自分で味や香り、食感を変えられる仕組みとなる。

 背景として大きいのは、スターバックスがあらためて「店舗でしか得られない体験」を強めようとしていることではないだろうか。モバイルオーダーやテイクアウトが定着し、コーヒーを買うだけなら店員とのやり取りを最小限にすることもできる。一方、客自身がバーの前で「何を足そうか」と考え、実際に味を変化させる行為は、商品を受け取るだけでは生まれない体験である。

「マイ カスタマイズ バー」イメージ
「マイ カスタマイズ バー」イメージ

 そして、令和の時代は、飲食に対する好みが以前にも増して細分化している。甘さ控えめを好む人もいれば、香りを強くしたい人、スパイス感を足したい人、食感の変化を楽しみたい人もいる。同じ一杯を万人向けに仕上げるより、「最後は自分で調整できる」という余白を残す方が、多様化した嗜好には合いやすい。カスタマイズ文化を長年強みにしてきたスターバックスにとって、客自身が最終調整を行う仕組みは、現在の消費者意識とも相性が良い。

 しかも今回は、単なる“無料トッピングの復活”ではない。「バニラ シュガー & ソルト」や「ペッパー カルダモン メープル ソース」、「ジンジャー シュガー チップ」などを新たに用意し、既存のビバレッジの楽しみ方そのものを増やしている。対象ビバレッジのカスタマイズと組み合わせれば、理論上は最大527万通りになるという。

 これは、新商品を次々と開発しなくても、既存商品に“新しい発見”を生み出せる仕組みとも言える。例えば、いつものカプチーノでもトッピングを変えれば別の味として楽しめる。利用客にとっては来店するたびに試す理由が増え、スターバックス側にとっては定番商品の再活性化につながる可能性がある。

 さらに、店舗運営の面でもメリットが考えられる。これまでスタッフが注文ごとに追加していた一部のトッピングを、客自身が仕上げる形に移せれば、繁忙時間帯の作業負担をわずかでも減らせる可能性がある。カスタマイズの選択肢が増えるほど、一杯ごとの工程は複雑になりやすい。そこで「最後のひと手間」をセルフサービス化できれば、客の自由度を高めながら、店舗側のオペレーション効率化にもつながり得る(ただし、これはスターバックスが公式に省力化を目的として掲げているわけではなく、仕組みから推察できる副次的な効果だ)。

 2026年は、日本上陸30周年にあたる。そう考えると、「マイ カスタマイズ バー」は懐かしいサービスの単純復活ではない。30年前から続くスターバックスらしさを、好みが細分化し、モバイル注文も当たり前になった令和の消費環境に合わせて作り直す試みなのだろう。

 効率化が進んだからこそ、あえて客自身がひと手間を加える。しかも、そのひと手間が店舗側の負担軽減にもつながる可能性がある。「自分好みにできる楽しさ」と「店舗運営の効率」を両立させる仕組みとして、今回の復活には令和ならではの合理性がありそうだ。

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