
ホテルのスイーツビュッフェでは、時折「歴史上の人物」が主役になる。これは一体なぜなのだろうか。
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例えばヒルトン東京は9月9日より、マリー・アントワネットの「最後の舞踏会」をイメージした秋のスイーツビュッフェ「マリー・アントワネット ラ・フィナーレ」を展開する。ダスティピンクや紫、ゴールド、シャンデリアなどで空間を構成し、無花果や巨峰、栗など秋の食材を使ったスイーツを「王妃のラストダンス」という物語に組み込んだ。
もしこれが単に「秋のブドウ&栗スイーツフェア」だったら、印象はかなり異なるだろう。歴史上の人物を設定する最大のメリットは、「世界観を一気に作れる」ことだ。料理だけでなく、会場装飾、食器、音楽、スタッフの衣装、メニュー名まで、1つの物語としてまとめられる。

中でもマリー・アントワネットは、この手法と抜群に相性がいい。豪華なドレス、宝石、宮殿、舞踏会、バラ、マカロン。現代人が彼女の名前から連想するモチーフは多く、その多くがホテルスイーツの「華やかさ」と重なる。

実際、ヒルトン東京は2024年にも「マリー・アントワネット-王妃のマスカレード」を開催。仮面舞踏会を題材に、大広間や王妃の秘密のサロンを思わせる空間を作り込んだ。

2025年には、ヒルトン大阪も「ストロベリースイーツビュッフェ ~Marie Antoinette~」を展開している。オーストリアの伝統菓子をアレンジしたスイーツや、ドレス、ジュエリーをイメージしたケーキを用意した。

ヒルトン広島でも2023年、「マリー・アントワネット 王妃のお茶会」を開催。彼女に実際に献上されたとされるケーキの再現に加え、直筆の手紙まで展示された。もはや食事イベントというより、小さな展覧会に近い。

もちろん、使われる人物は彼女だけではない。「セント レジス ホテル 大阪」は2022年、映画公開に合わせて「レディ・ダイアナ アフタヌーンティー」を企画。ダイアナ元妃が愛したジュエリーやファッション、料理をスイーツに落とし込んだ。「ザ・リッツ・カールトン大阪」では、アフタヌーンティー文化を始めたとされる第7代ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアにちなむ「アンナ・マリアズ ティールーム」も展開された。

つまりホテルが売っているのは、ケーキだけではない。歴史上の人物を入口にすれば、客はその人物の時代へ「入場」できる。写真を撮り、料理名を読み、背景の物語を知りながら食べることできる。
食べ放題から「物語の体験」へ。マリー・アントワネットが何度もホテルの舞踏会へ”呼び戻される”のは、彼女ほど、その物語を視覚化しやすい人物がなかなかいないからなのだろう。
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