【焼き色は化粧】なぜ秋スイーツは「焦がす」と急に高級に見えるのか?

「“蜜芋”の焦がしブリュレパイ」イメージコラム
「“蜜芋”の焦がしブリュレパイ」イメージ
「“蜜芋”の焦がしブリュレパイ」イメージ
「カフェ&ブックス ビブリオテーク」の「“蜜芋”の焦がしブリュレパイ」イメージ

 スイーツにとって「焦げ」は、本来なら失敗を連想させる言葉だ。ところが秋になると事情が変わる。「ブリュレ」、「キャラメリゼ」、「焦がしバター」、「焼き蜜芋」。むしろ、焦がしていることや焼き色を付けていることをアピールするスイーツが目立ってくる。

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スターバックス「紅はるかと安納芋の焼き蜜芋ケーキ」イメージ
スターバックス「紅はるかと安納芋の焼き蜜芋ケーキ」イメージ

 なぜ秋スイーツは、わざわざ「焦がす」のだろうか?

 1つ考えられる理由は、甘味に「苦味」を加えられることだ。砂糖やクリーム、さつまいも、栗など、秋スイーツには濃厚な甘味を持つ素材が多い。そこへキャラメリゼした砂糖などのほろ苦さが加われば、甘味一辺倒ではなくなる。わずかな苦味が味に複雑さを生み、「大人っぽい味」や上質感にもつながる。

「“蜜芋”の焦がしブリュレパイ」イメージ
「カフェ&ブックス ビブリオテーク」の「“蜜芋”の焦がしブリュレパイ」イメージ

 例えば、甘味の強いさつまいもをブリュレ仕立てにしたスイーツでは、表面を香ばしくキャラメリゼすることで、芋の甘味とは異なる苦味や食感を重ねられる。甘い素材だからこそ、「焦がす」意味が出てくるわけだ。

 もう1つは「香り」だ。焼いたパンやクッキー、ローストしたナッツを思い浮かべると分かりやすい。食材は加熱することで香ばしい香りが生まれ、その香りだけでも焼きたてや出来たてを連想させる。焦がしバターなども、単なるバターとは異なる香ばしさを前面に出せる。

高輪ゲートウェイ駅「MAISON CLASSIC FACTORY」の「ブリュレシュークリーム」イメージ
高輪ゲートウェイ駅「MAISON CLASSIC FACTORY」の「ブリュレシュークリーム」イメージ

 さらに、「焦がす」という工程そのものが高級感を生みやすい。

 クリームを絞って終わりではなく、その表面をバーナーで焼く。砂糖を振り、キャラメリゼする。バターをあえて焦げる直前まで加熱する。完成間際にもう一工程を加えていることが、食べる側にも分かりやすい。「わざわざ最後に手を加えた」という痕跡が表面に残るため、手間をかけて仕上げたスイーツに見えやすいのだ。ブリュレの焼きむらさえ、工場で均一に作ったものとは違う“手仕事感”として映る。

 そして意外に大きいのが、「茶色」という視覚効果ではないだろうか。

「まるごとリンゴと焦がしブリュレのパンケーキ アールグレイカスタードソース」イメージ
「カフェ&ブックス ビブリオテーク」の「まるごとリンゴと焦がしブリュレのパンケーキ アールグレイカスタードソース」イメージ

 春のイチゴ、夏のマンゴー、初夏のメロンなどは、鮮やかな果物そのものが季節感を演出してくれる。一方、秋を代表する栗、さつまいも、ナッツ、キャラメル、ほうじ茶などは、もともと茶系の色が多い。

 そこに焼き色を加えれば、薄いベージュから濃いブラウンまで色の階調が生まれる。明るく爽やかな夏のスイーツとは対照的に、落ち着きや深みのある見た目になる。苦味、香り、茶色という三つの要素が重なることで、「秋らしさ」が完成するとも言えそうだ。

 つまり秋スイーツにおける「焦げ」は、単なる調理法ではない。苦味で味を引き締め、香りを強め、焼き色で季節感を作り、さらに仕上げのひと手間まで目に見える形で伝えてくれる。

 ほんの少し表面を焦がすだけなのに、なぜか手の込んだ一皿に見える。「焦げ」は失敗どころか、秋スイーツを一段高級に見せる、かなり優秀な“化粧”なのかもしれない。

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