ファミマはなぜ“新食感”にこだわるのか? パンからシュークリームまで広がる「食感で選ばせる」戦略

「絶品シュークリーム大集(シュー)合!」キャンペーンのイメージ編集部
「絶品シュークリーム大集(シュー)合!」キャンペーンのイメージ
「絶品シュークリーム大集(シュー)合!」キャンペーンのイメージ
「絶品シュークリーム大集(シュー)合!」キャンペーンのイメージ

 コンビニの新商品競争で、味だけを語るのは少し難しくなってきている。濃厚、なめらか、たっぷり、リッチ、専門店監修。どれも魅力的な言葉だが、売り場では似たような表現が並びやすい。そんな中、ファミリーマートが最近強く打ち出しているのが新食感だ。

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「超も~っちりパン」シリーズの商品発表会・試食会の様子
「超も~っちりパン」シリーズの商品発表会・試食会の様子

 4月には「ファミマルBakery」発の人気パンを“超も~っちり”食感に進化させた「超も~っちりパン」シリーズ3種を発売。ラインアップは「も〜っちり食感キャラメルドーナツ」、「も〜っちり食感ホイップあんぱん」、「も〜っちり食感ピザパン」で、いずれも食感を前面に出した商品名となっている。

「絶品シュークリーム大集(シュー)合!」キャンペーンのイメージ
「絶品シュークリーム大集(シュー)合!」キャンペーンのイメージ

 5月12日からは、全国約16,400店舗で「絶品シュークリーム大集(シュー)合!」キャンペーンを展開。人気シュー2品のリニューアルに加え、「ザクほろシュー(チョコクリーム)」と「もちむにシュー(ミルククリーム)」という新食感シュー2品を投入する。

 注目したいのは、ファミリーマートの新食感訴求が、もはやパン単体のキャンペーンではなく、スイーツ領域にも広がっている点だ。

「も〜っちもち」、「むぎゅもち」、「じゅわもち」、「ザクほろ」、「もちむに」。これらの言葉は、味の説明というより、食べる前に口の中の感覚を想像させる“体験の予告”に近い。

「甘いパンです」と言われるより、「むぎゅもち」と言われた方が、噛んだ瞬間の密度感が浮かぶ。「チョコクリームのシューです」と言われるより、「ザクほろシュー」と言われた方が、歯を入れたときの崩れ方まで想像できる。売り場での数秒勝負において、この差は小さくない。

 4月の「超も~っちりパン」シリーズでは、商品ごとに異なる食感ワードが設定されていた。「も〜っちり食感キャラメルドーナツ」は「も〜っちもち」、「も〜っちり食感ホイップあんぱん」は「むぎゅもち」、「も〜っちり食感ピザパン」は「じゅわもち」がテーマ。単に“もちもち”で一括りにせず、食感を細かく言語化している。

「ザクほろシュー(チョコクリーム)」イメージ
「ザクほろシュー(チョコクリーム)」イメージ

 一方、5月のシュークリームでは方向性がさらに広がる。「ザクほろシュー(チョコクリーム)」は、新食感「ザクほろ食感」のシューパフに、なめらかなチョコクリームを詰めたクッキーシュークリーム。食感と味わいのバランスを生み出すため、半年以上試行錯誤を重ねたという。

 もう一つの「もちむにシュー(ミルククリーム)」は、新食感「もちむに食感」のシューパフに、ふんわりミルククリームを詰めた商品。生地の仕込み方や焼き上げ温度などを工夫することで、見た目はぷっくり、食べるともちもちした食感に仕上げている。

 つまりファミリーマートは、商品名に食感ワードをのせているだけではない。食感を実現するために原材料や配合、製法、焼き上げまで調整している。言葉が先行し商品が追随するのではなく、食感体験そのものを商品設計の中心に据えている。

 同戦略が面白いのは、食感が「味わい」と「満足感」、「SNS映え」を同時に担えることだ。

「クリームたっぷり!ダブルシュー」イメージ
「クリームたっぷり!ダブルシュー」イメージ

 シュークリームは、クリーム量やカスタードの濃厚さで語られやすい定番商品だ。実際、今回のキャンペーンでも「クリームたっぷり!ダブルシュー」は量を重視する層に向けて大きさにフォーカスし、「バニラたっぷり!濃厚カスタードシュー」はマダガスカル産バニラビーンズを増量してリッチ感を高めている。

 そこに「ザクほろ」や「もちむに」が加わることで、定番のシュークリーム売り場に“選ぶ理由”が増える。王道派にはクリーム量や濃厚カスタードを想定している。SNS映えや新体験を重視する若年層にはザクほろやもちむにを用意している。ファミリーマートは、同じシュークリームというカテゴリーの中で、味・量・香り・食感という複数の選択要因を用意している。

2026年度スイーツ戦略発表 「絶品シュークリーム大集(シュー)合!」 発表会の様子
2026年度スイーツ戦略発表 「絶品シュークリーム大集(シュー)合!」 発表会の様子

 ファミリーマートの商品本部・スイーツ部長の鈴木崇義さんは、4月の発表会で「食感トレンドが長く継続している」とし、動画映えや体験価値だけでなく、もちもちやザクザクなどの食感が「おいしさの基準」として非常に高いウェイトを持っていると分析している。また、現在のトレンドは、硬く弾力のあるもちもちではなく、「みずみずしいもちもち食感」だとも語っている。

 この発言は、今回の一連の商品展開を読み解く鍵になる。

 ファミリーマートが狙っているのは、ただ奇抜な食感を出すことではない。消費者が「おいしそう」だけでなく、「ちょっと食べて確かめたい」と思うきっかけを作ることだ。新商品が多すぎて選べない時代に、食感は強いフックになる。

「も〜っちり食感キャラメルドーナツ」税込み178円
「も〜っちり食感キャラメルドーナツ」税込み178円

 しかも食感は、SNSや動画との相性が良い。パンを割る、シューをかじる、クリームが見える、生地が沈む、表面が崩れる。味は画面越しに伝わりにくいが、食感は映像化しやすい。ザク、もち、むに、じゅわ。これらの言葉は、短い動画の中でも伝わりやすい“音のある味わい”でもある。

 4月のパン、5月のシュークリームと続けて見ると、ファミリーマートの新食感戦略は一過性の企画ではなく、商品開発の軸になりつつあるように見える。味を磨く。量を満たす。価格を抑える。そのうえで、記憶に残る食感を足す。これが、物価高の中でも消費者に「買ってみよう」と思わせるための現実的な勝ち筋の1つなのかもしれない。

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