
令和のかき氷が、日本の夏の風物詩である「氷菓」の枠を超えつつある。近年の新作を見ているとショートケーキ、チーズタルト、バスクチーズケーキ、モンブラン、ドルチェ……とかき氷の周辺にやたらと“スイーツ語”が集まっている。氷なのにケーキ。冷たいのにドルチェ。少し不思議なこの現象に迫る。
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今夏は、ファミリーレストランやカフェ、専門店の新作として「ショートケーキ氷」、「チーズタルト氷」、「モンブラン風かき氷」など既存の人気スイーツを想起させる商品が目立つ。これは、かき氷が味そのものだけでなく、“人々の記憶にあるスイーツ体験”を再現する商品へと変化していることを示しているように見える。

1つ重要なのは、かき氷とケーキは本来、似て非なるものだという点だ。スポンジも焼成もない。生地の重なりではなく氷の削り、ソース、クリーム、果物、食感素材の重ね方で成立する。それでも「ショートケーキ」や「チーズタルト」と名付けるのは、正確な分類というより、甘さと満足感を伝えるための記号に近いだろう。

消費者は「いちご練乳氷」と聞くより、「ショートケーキ氷」と聞いた方がクリーム感、華やかさ、ご褒美感をすぐイメージできる。つまり「ケーキ」や「スイーツ」という言葉は、かき氷の甘さや贅沢さを伝える”ショートカット機能”の役割を果たしている。ネーミングが、スプーンより先に口の中を動かすのだ。

かき氷には、店側にとってのメリットもある。氷の主材料は水であり、国産の純氷や天然水を使う場合でも、ケーキのように小麦粉、卵、バター、生クリームを大量に組み合わせる商品とは原価構造が異なる。もちろん、果物、チョコレート、チーズ、ナッツ、手作りソース、人件費、削氷機、廃棄ロスまで含めれば、単純に「氷だから安い」とは言えない。

それでも、ベースとなる氷の分量や仕入れは比較的計算しやすく、そこにパティシエ的なソースやクリームを重ねることで、見栄えと単価を高めやすい。うまく設計すれば、利益率の面でも魅力的な夏商品になり得る。暑さが需要を後押しし、SNS映えするビジュアルが拡散を後押しする点もかき氷の強みだ。

他方、かき氷は物理的に溶ける。提供スピード、温度管理、器、写真映え、食べ進めた時の味の変化まで、実はかなり繊細なスイーツだ。氷の中に何を忍ばせるか、上に何をのせるか、最後まで甘すぎず飽きさせないか。ここに職人性やセンスが求められる。
「ケーキ化」、「スイーツ化」したかき氷とは、それらの「ふり」をした氷ではない。ケーキやスイーツという文法を借りた、新しい冷菓としてのポジションを担っていく存在なのかもしれない。
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